「クマのプーさん」の世界詳細
「クマのプーさん」の世界口コミ
あとがきで筆者が言っているように、本書はまさに「作品を文学の流れや歴史や文化の文脈で読むこと」に徹した本だといえる。1章はキャラクターの解説、2・3章は小説「プー」全話の解説、4章では戦争と物語に関する考察や、ディズニーによるアダプテーションについての考察が行われている。そのいずれもが、単に物語を辿るだけの表層的なものではなく、関連する情報が深く掘り下げられていて充実している。例えば1章の「クマのプー」の解説の項では、クリストファー(作家ミルンの実在の息子の)が買い与えられたエドワードと名付けられたテディベアの話題から、テディベアの由来となったセオドアルーズベルトの話に発展する。そしてプーの名前の「ウィニー」が実在のクマの名前であったことや、「ザ」が男性の偉人の称号によく使われることなど、名前のそれぞれのパーツの解説に広がってゆく。この調子で物語を読むだけでは知り得ない情報が、キャラクター、ストーリーそれぞれに展開される。さらにプー研究の正典ともいうべき研究書籍がきちんと踏まえられているので、かなり読み応えがある。逆に「あ、プーさんだ」くらいのライトな気持ちで手に取ると、内容の濃さにくらくらするかもしれない。