可動フィギュアの関節:破損を防ぐ動かし方と注意点
可動フィギュアは、その名の通り様々なポーズを再現できる魅力的なホビーアイテムです。しかし、その可動部分である関節は、使い方を誤ると破損してしまう可能性があります。このページでは、可動フィギュアの関節を破損させずに長く楽しむための、具体的な動かし方や注意点について解説します。
関節の構造と破損の原因
ボールジョイント
最も一般的な関節形式で、球体とそれをはめ込むソケットで構成されています。自由な可動域を持つ反面、無理な方向に力を加えると、球体がソケットから外れたり、プラ部品が摩耗・破損したりすることがあります。特に、軸が細い部分は折れやすい傾向があります。
クリックボールジョイント
ボールジョイントに、カチカチと段階的に動くための「クリック」機構が追加されたものです。可動域は制限されますが、意図しない方向に動いてしまうことを防ぎ、保持力も高まります。しかし、過度な力を加えるとクリック機構が破損したり、ボールジョイント部分が摩耗したりする可能性があります。
ラチェットジョイント
歯車のような構造で、段階的に可動します。クリックボールジョイントと同様に、保持力が高く、特定の角度で固定しやすいのが特徴です。しかし、無理に回転させたり、反対方向に強く押し込んだりすると、歯車が欠けたり破損したりするリスクがあります。
ヒンジジョイント
蝶番のような構造で、主に肘や膝などに使われます。軸を中心に回転することで可動しますが、軸が細い場合や、軸を中心に「ひねる」ような力を加えると、折損する可能性があります。また、可動域を超えて無理に曲げすぎると、ヒンジ部分のプラが白化し、強度が低下します。
首(ボールジョイント・軸関節)
顔の向きを変えるための関節です。ボールジョイントの場合は、首の軸が細いことが多く、無理な回し方や、頭部を強く引っ張ったりすると破損しやすいです。軸関節の場合は、軸が細いと折れやすい傾向があります。
股関節・足首関節
フィギュアの接地性やポーズの多様性を支える重要な部分です。股関節は、ボールジョイントやスイングジョイントなどが組み合わされています。過度な開脚や、前後への無理な角度の調整は、根元部分の破損につながることがあります。足首関節は、接地性を高めるために様々な機構が採用されていますが、根本的な軸部分や、可動域を超えた無理な曲げは破損の原因となります。
破損を防ぐための具体的な動かし方
① ゆっくり、慎重に動かす
フィギュアを手に取ったら、まずは急いで動かさないことが重要です。関節を動かす前に、どの方向にどの程度動くのか、また、どこかに干渉するものがないかを目視で確認しましょう。
② 可動域を確認しながら動かす
各関節には、設計上の可動域があります。無理にそこを超えて動かそうとすると、破損に直結します。関節の動きが固いと感じる場合は、力任せに動かすのではなく、一旦動きを止めて、少しずつ角度を変えながら様子を見てください。関節の根元や軸のあたりを軽く押さえながら動かすと、負担を軽減できる場合があります。
③ 軸を「ひねる」のではなく「回転」させる
特にヒンジジョイントや、ボールジョイントの軸部分を「ひねる」ような力を加えると、折れやすくなります。関節を動かす際は、軸を中心に回転させるイメージで動かすように心がけましょう。例えば、肘を曲げる際には、肘関節の軸を中心に曲げるのであって、肘関節全体をひねるような動きは避けます。
④ 乾燥・劣化に注意する
長期間、箱に入れたままにしたり、直射日光の当たる場所に置いたりすると、プラ素材が乾燥・劣化し、関節が脆くなることがあります。定期的にフィギュアを手に取り、適度な温度・湿度の環境で保管・展示することをおすすめします。
⑤ 接続部分の摩耗に注意する
何度も抜き差しを繰り返したり、無理な角度で接続したりすると、関節の接続部分が摩耗し、保持力が低下したり、緩みが生じたりします。特に、パーツの交換が頻繁な場合(手首の交換など)は、慎重に抜き差しを行いましょう。
⑥ 頭部や顔のポーズ調整
首の関節は、細かい動きで表情を演出できますが、同時に破損しやすい箇所でもあります。頭部を固定したまま首を無理に回すのではなく、頭部全体を支えながら、首の関節をゆっくりと回しましょう。また、顔にパーツが干渉していないか確認することも大切です。
⑦ 関節の「癖」を把握する
個々のフィギュアには、関節の可動域や固さに「癖」があります。一度動かしてみて、そのフィギュアの関節がどのような動きが得意で、どのような動きに弱いのかを把握することが、長期的に破損を防ぐ上で役立ちます。
その他:メンテナンスと保管
関節の緩み
長期間の使用や、上記のような注意点を守らなかった場合、関節が緩くなることがあります。軽度の緩みであれば、クリアーファイルなどを挟んで保持力を補強する方法があります。ただし、これはあくまで応急処置であり、根本的な解決にはなりません。
関節の固着
逆に、関節が固まってしまい動かせなくなることもあります。この場合、ドライヤーなどで軽く温めることで、プラをわずかに柔らかくし、動かしやすくなることがあります。ただし、温めすぎは変形や破損の原因となるため、短時間で、弱めの温度から試してください。温めた後は、ゆっくりと動かして固着を解消します。
パーツの脱落
関節が外れてしまった場合、多くはボールジョイントの球体がソケットから外れた状態です。この場合は、慎重に元の位置に戻すことができます。無理に押し込まず、ソケットの向きを確認しながらゆっくりと挿入しましょう。
保管方法
フィギュアは、専用のディスプレイケースや、湿度の低い、直射日光の当たらない場所で保管することをおすすめします。ポーズをつけたまま保管する場合も、関節に過度な負担がかからないような自然なポーズを選びましょう。長期間動かさない場合は、関節を中立の位置に戻しておくと、負荷が軽減されます。
購入時の確認
新品購入時でも、工場での初期不良や、輸送中の衝撃などで関節に問題がある場合があります。購入後、すぐに検品を行い、異常がないか確認することが大切です。
まとめ
可動フィギュアの関節は、繊細な構造ゆえに注意が必要です。しかし、今回ご紹介したような、ゆっくり、慎重に、可動域を確認しながら動かすという基本的な動作を心がけるだけで、関節の破損リスクを大幅に減らすことができます。また、保管方法やメンテナンスにも気を配ることで、お気に入りのフィギュアを、より長く、より良い状態で楽しむことができるでしょう。
