くまのプーさん 英国文学の想像力 (光文社新書)

くまのプーさん 英国文学の想像力 (光文社新書)詳細

くまのプーさん 英国文学の想像力 (光文社新書)

くまのプーさん 英国文学の想像力 (光文社新書)口コミ

この本には二つの柱がある。一つは、くまのプーさんの物語の読み解き。もう一つは、作者A.A.ミルンの生涯。前者は、大学文学部の授業やセミナーでの作品講読では、作品が執筆された背景がこのように解析され、それぞれの章やフレーズを分析し読み解いているのだろうといった内容。この部分では、石井桃子訳ではなくて、本書の著者の独自訳に基づいて話が進められている。言われてみればそうだったのか、といった感想をもった。ただし、読後に印象に残ったのは、なんといっても作者ミルンの生い立ちで、成長の過程、家族や親族との付き合い、二度の世界大戦をはさんだ仕事・思考・著作・名声、そして、プーさんの物語の登場人物となった息子クリストファーの成人後の苦悩と父子の別離である。しらないことも多く楽しんで読んだ。

いまや「クマのプーさん」といえば、ディズニーの「プーさん」がオリジナルだと思っている人の方が多いだろう。それほどディズニーのプーは人気がある。もちろん本書はミルンの原作の「プー」を追ったものだ。プーはミルンの息子と子供部屋のぬいぐるみが発想の源となっている。その息子は長じて、プーの重みに耐えられなくなり、父子の離反を招く。プーには責任はないのだが、哀しい。ファンタジーの裏側を知ることが良いのかどうか、読者としてまだ答えは出ていない。